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秋田では毎年10月になるとCreeping Diseaseの患者がちらほら来院するようになる.八郎潟周辺の病院に外勤に出て,1日で3例のCreeping Diseaseを診断したこともあった.毎年,秋から冬にかけて多発するCreeping Diseaseの正体は一体なんであろうか?摘出された虫体や血清学的所見から判断するとどうやら顎口虫(日本顎口虫など)らしい.多発時期は八郎潟のシラウオ漁の漁期(9〜10月下旬)に概ね一致している.また,患者の多くはシラウオの生食歴がある.こうした間接的証拠から,多発するCreeping Diseaseの犯人は八郎潟産シラウオの疑いが強い.治療は教科書的には虫体の摘出だが,大きく皮膚を切除しても虫体を検出するのは容易ではない.患者が多発すると,外勤先で切除するのも躊躇してしまう.中にはうら若き女性の患者もいる.虫体を追い求めて体をなますのように切り刻むのも気が進まない.当科で駆虫剤を使用し,皮疹の新生がピタリと消失した症例もあるが,これとて,本当に薬が効いたのかどうか怪しいものである.一方で,駆虫剤の全く効かない症例も経験した.本当に虫体は摘出しなくてはいけないのだろうか?顎口虫はヒト体内では成虫になれず,やがて死滅することが知られている.顎口虫症による死亡例もあるとのことだが,本当に顎口虫のために死亡したのか,好酸球増多のためなのか,他疾患の偶発なのか,わからない症例も過去にはあったのではないだろうか?そこで,血中好酸球の著明な増加がない例では虫体摘出を試みずに,経過を観察することにした.まだ,5例と症例は少ないが,治癒確認2例,あとは確認していないが治ったものと希望的に判断した.よって,秋田のシラウオ生食によるCreeping Disease(顎口虫症)では好酸球による臓器障害を起こさない限り,積極的に虫体切除を試みないのもひとつの選択肢になりうるのではないかと思っている.さらに症例を追加して検討していきたい.
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