Derm.'97
潰瘍は一日にして成る
神田 憲子
1
1東京女子医科大学皮膚科
pp.133
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902188
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出張病院での出来事.皮膚科は眼科,脳外科,泌尿器科との混合病棟で,時々褥瘡や薬疹,足白癬などでコンサルトされる.ある金曜日,左足が発赤している患者を診てほしいと看護婦に頼まれた.コントロール不良の糖尿病で,白内障の手術のため眼科に入院しているという.左第4趾間が浸軟しており,足背から下腿にかけてびまん性に熱感を伴う紅斑を認めた.足白癬から蜂窩織炎が生じたものと考え,ペニシリン系の抗生物質点滴と趾間の消毒,下腿のアクリノール湿布を指示した.土,日の間は同様の処置を続けてもらい,週明けに診ればよいか,などと軽い気持ちでいた.月曜日に再診すると,下腿の紅斑は軽快していたが,趾間はびらんとなり,第5趾から足背にかけて著しい発赤,腫脹を認めた.特に第5趾は紫紅色調を呈し,明らかに循環障害を起こしていた.随時血糖は500台,CRP20と高値で,蜂窩織炎の増悪と考え,急遽皮膚科に転科した(抗生剤がヒットしなかったこともあるが,患者は病識がなく甘いものを隠れ食いしていた).
処置は連日ヒビテン浴と抗生剤外用,感受性のあったセフェム系の点滴,ミノサイクリン・消炎鎮痛剤の内服を,血糖に関しては内科医の指導のもとに頻回の速攻型インスリン注射を行った.数日でCRPは正常化し,血糖も200台に落ちついた.第5趾の腫脹は軽快し,色調も淡紅色調となり,ようやく危機は脱した.しかし第4趾間には深さ約1cmの潰瘍の形成がみられ,上皮化までに1か月以上を要した.土,日に面倒くさがらないで病棟に様子を診に行っていれば……と今でも悔やまれる.
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