Derm.'97
イボを治すということは
上田 英一郎
1
1京都府立医科大学皮膚科
pp.142
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902191
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皮膚科外来診療において難治性の疾患はいくつかありますが,とりわけ足底疣贅(plantarwarts)の治療に苦慮されている先生方は大勢いらっしゃると思います.私も研修医時代,足底に米粒大の疣贅を発見し,外来診療の終わった処置室で液体窒素凍結療法を続けていました.しかし,患者の立場に立った(痛くなったらすぐ手をゆるめる)治療では一向に治らず,その疣贅は1年以上も存在していました.そんな折り,新村眞人教授(慈恵医大皮膚科)による本学学生のためのHPVに関する講義が行われ,私は2年目の研修医として拝聴させていただきました.この講義は毎年行っていただいており,前年度も聞かせていただいたのですが,この年は1年間難治なイボを持つ患者の立場でじっくりと聞かせていただきました.新村先生は,講義の最後にイボ地蔵の写真とともにイボの暗示療法について説明され,私は先生のお話をうかがっているうちになぜか「治るかもしれない……」という気持ちになりました.すると不思議なことに2週間ほどして私のイボは消えてしまったのです.1年前にも同じ講義を聞いていたのですが,その時はさまざまな治療法があるということを知識として得ただけでした.このことより,イボの暗示療法は患者さんを暗示にかけるのではなく,「この先生の言うことを聞いていたら治るだろう」という安心感を持ってもらうことではないかと感じました.この安心感は,医師として信頼されているということを意味しているのでしょうが,そのためには科学者として正しい理論に基づく豊富な知識と.人としての優しさが必要であると私は思います.
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