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紫外線(UVB)の暴露により生じる皮膚色素沈着がケラチノサイト由来のサイトカインによるメラノサイトの活性化に基づくというパラクリン的メカニズムを証明するため,紫外線照射培養ヒトケラチノサイトの培養液中に培養ヒトメラノサイトの増殖およびメラニン合成活性を促進する因子を見いだし,この因子のメラノサイト活性化を引き起こす細胞内情報伝達系の特徴であるカルシウムの動員作用より既知のサイトカインの探索を行った結果,この因子がエンドセリンである可能性が示唆された.エンドセリンは確かにヒトメラノサイトに対し特異な受容体を介しイノシトール回路のターンオーバーを促進しイノシトールトリスフォスフェイトの生成を通してカルシウムの細胞内動員を引き起こし,プロテインカイナーゼC活性を上昇させることにより細胞増殖とチロシナーゼ酵素のmRNAの増加を伴ってメラニン合成を促進することが判明した.一方,ヒトケラチノサイトがエンドセリンを合成分泌し,紫外線照射によりこのプロセスが亢進されることも,エンドセリン遺伝存のNorthern blot解析等から明らかとなり,さらに紫外線照射後にヒトケラチノサイト培養上清で認められたヒトメラノサイト活性化作用は,エンドセリン−1の抗体の添加によりほぼ完全に消失することから,エンドセリンがその活性の本体であることが明らかとなった.In vivoでのエンドセリンの紫外線色素沈着への関与も,紫外線照射ヒト表皮でのエンドセリン−1,チロシナーゼ酵素,IL−1 alphaのmRNAの発現がRT—PCR法で増加していることより確認した.以上の実験事実より,紫外線による皮膚色素沈着機構における表皮内ケラチノサイトとメラノサイトのエンドセリンを介したパラクリン的色素形成メカニズムが明らかとなった.
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