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2年間にわたって連載させていただいた研究ノートも,今回が最終回である.編集部の意向は,もっとアカデミック志向であったようだが,毎月,軽い話ばかりで誌面を埋めたことをまずお詫びしなくてはならない.私事で恐縮だが,私もこの12月で40歳を迎えることになる.30歳になったとき畏友(といっても7年も先輩だが)滝川先生から“Thirty over the hill”のカードを戴いたお返しに彼の40歳の誕生日に“Lifebegins at 40”のカードを送ったのがつい昨日のようだが,とうとう自分がその歳になってしまった.カードを開くと,“……it's about time you show some signsof life!”と印刷されている.そのsignというのはしみ,しわなどの老徴ではなく,自らの立脚するpolicyに支えられた人生なり仕事なりの証しでなくてはなるまい.日本でも「不惑」とか「分別盛り」とかいわれるが,確かに医師としても中堅の仲間入りをしたし,体型もすでに立派に中年と化している.20代のときと変わったことといえば,夜,実験のアイディアが沸いて眠れないとか,夜中に起きて実験ノートに書き留めるとかいうことはすっかりなくなり,ぐっすり眠れ,むしろ朝早く目が醒めがちである.30代のときと比べると実験結果に淡白になった.「じゃあ,まあいいか」で済ませてしまうことがふえた気がする(こういうのを「ジャマイカおじさん」と言うそうである).そのくせ,自分の研究領域にひどく執着する悪い癖が染みついてきた.しかし考えてみれば,卒業してまだ15年,医師としては,折り返し点にも達していない.人生と同様に,研究も臨床もやっと輪郭をつかみかけてきたころで,変革できないことは受容し,変革すべきことは勇気をもって実行することができる年代でもある.その意味では,まさにLife begins at 40なのかもしれない.こういうふうに自らを鼓舞しないといけないところが歳をとった証拠かもしれないという病識はあるが,また新たなdecade,21世紀に向けて頑張りたいと思う.
最後に,つたないコラムをご愛読いただいた先生方に誌面をお借りしてお礼を申し上げます.ありがとうございました.
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