- 有料閲覧
- 文献概要
教室の動物飼育室には,使わないまま古くなったモルモットが猫のようにまるまる太って残っていることがよくある.私は思いつきのideaが多いので,prelimi—naryな動物実験によくこういう老齢モルモットを使っていた.以前,何とか簡便に皮膚に紅斑を作る方法はないものかと考えて,酵素的な活性酸素産生系であるhypoxanthineとxanthine oxidaseの局注を思いついた.早速,老齢モルモットを使って試してみると見事な紅斑を惹起することができた.喜んで新しいモルモットを購入し,追試してみると全く紅斑はできない.いろいろな原因を考えて,薬剤のdoseを変えたり,タイミングを変えたりしてみたが再現性がない.落胆しながら考えていたときに、ふと「加齢」という要因に気がついた.老齢モルモットは,抗酸化防御能が減弱しているために紅斑を生じやすいのではないかと考え,若いモルモットと老齢モルモットを購入し,実験をくり返してみると,果して老齢モルモットでは鮮やかな紅斑がみられた.そこで,皮膚のSOD活性を測定してみたが,残念ながら,とくに加齢による差異はみられなかった.おそらく,みかけ上の皮膚抗酸化能は老化によっても変わらないが,ひとたび酸素ストレスが加わると,その対応能に加齢による差がみられ,紅斑の差となって出るのだろうと思う.
この実験を機会に,皮膚の老化というものに興味をもつようになった.皮膚のように不断に酸素ストレスを受ける臓器では,今までやってきた急性炎症だけではなく,老化や発癌といった長期的な現象も捉えなくてはいけないと考えたからである.紫外線については以前より関心をもち,ある程度実験もしていたので,当面,光老化をtargetに勉強しようと思った.そうすると必然的にサンスクリーンにも行きあたることになる.現時点では,サンスクリーンが最もすぐれた抗光老化剤と思われるが,抗酸化剤の側面からサンスクリーンをしのぐ抗光老化剤を作るのが目下の夢である.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.