研究ノート・16
イソジン・シュガー
宮地 良樹
1
1天理よろづ相談所病院皮膚科
pp.293
発行日 1991年4月1日
Published Date 1991/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412900315
- 有料閲覧
- 文献概要
昭和59年頃,外来で難治性下腿潰瘍の患者さんを何人か診ていて治療に苦渋していたとき,いわゆる「イソジン・シュガー」(ポビドンヨード・シュガー配合剤)のことを知り,実際に使ってみると,かなり有効であった.しかし,砂糖の顆粒がしみるとかボロボロ落ちるなど使用感に問題があり,また分離したり水あめ状になったりして安定性に欠けていた.そして何よりも自分で調合しなければならないのが煩雑だった.
丁度そのころ,他の治験薬の件で来られていたK社開発部のT氏にその話をしたら,非常に興味をもたれ,次回までに山ほど文献を探して来て下さった.さらに,社内で医薬品としての開発のプロジェクトを組み,研究所に依頼して安定な製剤のための薬剤の研究に着手することに奔走して下さった.それから,足かけ5年の歳月をかけて,臨床試験や基礎実論のお手伝いをすることになったこの薬剤の開発の端緒は,ほんのささいな雑談からだった.基剤は,米国や日本などで特許がとれ,治験も順調にすすみ,やっと製品として日の目を見ることになった.いままでずいぶん開発治験に参加させていただいたが,これほど主体的に参画したのは,はじめての経験だった.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.