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皮膚科診療の最大の特徴は症状が目視できることだと思います(瘙痒感は直接はみえませんが…).“みえるもの”に対して目視では得られない微細な情報を得るために皮膚生検を行い,多くの疾患ではその病理学的所見が診断に重要になってきます.そしてさらに情報を得るためにダーモスコピー,電子顕微鏡やその他の手法を用いて診断に役立てます.最近は研究において生体内で可視化する実験系が増えてきていますが,多くのアッセイはアウトカムを反映するマーカーや事象を測定して間接的に証明しているわけで,われわれが相手にしている皮疹というものはみえるが,その診断や病態を考える際には“みえないもの”を相手にする必要があります.研修医時代に教えていただいた皮膚科の先生は紹介状に対して,皮疹の性状から想像される病理像を意識してお返事を書いておられました.生検していなくとも所見を想像する,“みえるもの”から“みえないもの”を考えるというトレーニングは皮膚科医にとって非常に重要だと感じます.皮疹をみて生検像を意識し,その後に病理所見をみてフィードバックする,という流れが診断技術の向上に大事だと考えて,なるべくそれを意識して診療するように心がけています.最近ではどんな皮疹をみるときにもダーモスコピーを使っていて,そこから病理像を想像して診断を考えるプロセスはなかなか楽しいです.もう1つ大事だと思うのは患者さんの性格=“みえないもの”を捉えて診療する,ということです.忙しい外来で時間が限られていると,よりセンスが求められるところです.“みえる”言動などから性格を探るわけですが,これが難しく,時に読み違えて失敗します.“みえるもの”から“みえないもの”を捉える技術を今後も磨いていきたいと思います.
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