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1. はじめに
しばらく前まではSFの中の話であった人工知能(artificial intelligence:AI)が,過去数年で急速な進歩を遂げ,実社会において大きな役割を果たすかもしれないところまで来ている.この空前のAIブームを作るブレイクスルーとなったのは,2006年に発表された「ディープラーニング」という機械学習の手法であり,これによって画像認識をはじめとするさまざまな領域において従来の方法を大幅に上回る画期的な進歩が産み出された.当初はクイズ番組や囲碁で人間のチャンピオンに勝利するといった話題が先行したが,近年医療においてもAIが着々と利活用されるようになってきている.一例を挙げると,2018年4月には糖尿病性網膜症を検出するAIを用いたデバイスが米国食品医薬品局により承認された.今後このような流れが加速の一途を辿ることは想像に難くない.
AIの進歩が人間との比較・競争という軸を中心に取り上げられてきたことから,AI活用の議論にはどこか感情的な要素が混じりがちである.AIが医療に画期的な進歩をもたらすだろうという大きな期待があるのと同時に,「AIによって,皮膚科医は失業してしまうだろう」という悲観的な意見や「すべての皮膚疾患が写真だけから診断できるわけがないからAIなんて無駄だ」あるいは「AIで誤診が起きても責任がとれないから使用すべきでない」というように全否定する考え方も耳にする.しかしながら,AIが皮膚科領域にも進出してくることは不可避であり,われわれは感情的な議論に流されることなくAIをどのように活用していくべきか,そのために今何をすべきかを冷静に見極めて行動していく必要があるだろう.日本皮膚科学会(日皮会)では,皮膚科領域におけるAIの進歩に迅速に対応できるように,島田眞路前理事長のリーダーシップの下にAIワーキンググループが2016年末に設立された.
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