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平成7年(1995年)に皮膚科医になり,今年で22年目になる.さして大きな業績もないが,入局して以来細々と実験を続けており,民間病院に在籍していた期間もときどき大学に戻って実験をしていた.先輩方が次々開業していくなかで自分の立場も変わり,診療,講演の準備,論文の添削,総説の執筆,査読,等々で忙殺され,自分の手を動かして実験をする時間が極端に短くなったのが非常に残念である.2015年に皮膚科医局が移転するにあたり,新しい研究室をデザインしたのは私なので,自分用のベンチをまだ確保しているが,そろそろ若い人に譲るべきなのかとも考える.
さて,広島大学では平成24年(2012年)度から医学研究実習というカリキュラムが始まった.医学部の4年生が約4か月もの間,授業や試験は一切なく,基礎医学や臨床医学の各講座で毎日研究三昧の生活を送る.二十歳そこそこの学生はみな理解が早く,実験も上手く,ほかにすることもないのでどんどん研究が進む.実習の最後にポスター発表を行うが,どれも学会で発表しても恥ずかしくない内容に仕上がる.一方,現在の医師臨床研修制度では,国家試験に合格してから初期研修が2年間,入局後の数年間を一般病院で臨床医として過ごすことが多いので,大学院に入学するのは30歳前後になる.年を取った分,彼らは理解が遅く,実験も下手で,さらに社会人大学院生の場合は病院の業務や外勤で追われて実験する時間はあまりない.どこかの偉い先生が言っていたように,医者に実験をさせても無駄で,テクニシャンにまかせておけばいいのかもしれない.しかし,臨床医学と基礎医学の狭間に一度でも身を置くと,基礎医学の世界の先端で何が行われているのか垣間見ることができる.広島大学の医学研究実習によって,少なからず研究マインドを培われた若い彼らが皮膚科に入局し,研究の世界でも活躍することを願いたい.臨床医も一度は実験をするべきではないか,と思う.
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