--------------------
文献紹介 癌精巣抗原MAGE-A3に対するTCR改変T細胞移入療法の神経学的毒性の発現に関する機序の解明
栗原 佑一
1
1慶應義塾大学
pp.234
発行日 2015年3月1日
Published Date 2015/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204354
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1991年に癌精巣抗原であるMAGE-1遺伝子が同定されてからT細胞移入療法やワクチン療法など悪性腫瘍に対する免疫細胞治療の研究が進んでいる.今回の論文では,悪性黒色腫をはじめとして上皮系悪性腫瘍の多くに発現しているMAGE-A3を標的としたT細胞受容体遺伝子導入T細胞(TCR-T細胞)の移入療法とそれによって生じた脳神経学的副作用について報告されている.
著者らは,自己の末梢血中のT細胞にMAGE-A3に高親和性でA9,A12も認識するTCRを導入・増幅し,抗癌剤処置の後に患者に移入する治療を行った.疾患は進行期のメラノーマや食道癌,滑膜肉腫で,9症例に実施し5症例で完全・部分寛解が得られた.しかし3症例では意識変容,痙攣や昏睡といった神経学的毒性を認め,そのうち2症例は死に至った.死亡した2例の病理解剖では脳細胞の壊死を認めていた.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.