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アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー性疾患ではTh2細胞が病態に密接に関わっている.Th2細胞はB細胞や好酸球,好塩基球に働きかけさまざまなアレルギー反応を引き起こすが,その際,サイトカインであるIL-4とIL-13が重要な働きを担っている.本論文ではIL-4受容体αサブユニットの阻害剤で,IL-4とIL-13の働きをともにおさえるデュピルマブ(dupilumab)の中等度から重症の喘息患者に対する効果を,ランダム化二重盲検プラセボ対照試験にて評価している.
対象は,ステロイド吸入薬と持続性β刺激薬にて治療中の中等度〜重症の好酸球増多を伴う喘息患者で,平均年齢は約40歳,血中TARC,IgE高値,プラセボ投与群とデュピルマブ投与群へ各52名ずつ無作為に振り分けられた.薬剤投与のプロトコールはデュピルマブあるいはプラセボを,週に1回,計12週間皮下に投与し,最初の4週間はステロイド吸入薬と持続性β刺激薬を併用し,その後の4週間はβ刺激薬を中止しステロイド吸入薬の漸減,そして最後の4週間ではデュピルマブあるいはプラセボ単独投与で加療するというものであった.結果はプラセボ投与群では試験期間中に44%の症例で喘息の増悪が認められたのに対し,デュピルマブ投与群では6%に抑えられた.気道閉塞の指標(FEV1:1秒率),喘息の重症度スコア(ACQ5)についてもデュピルマブ群で有意に改善を認めた.血中TARC値,IgE値もプラセボ群では不変であったが,デュピルマブ群で低下を認めた.このようにデュピルマブが喘息の臨床症状を改善し,血中のTh2関連バイオマーカーを低下させることが確認された.副作用はプラセボ群,デュピルマブ群とも対象者の約8割でみられたが概して軽微なものであった.投与部の皮膚反応や鼻咽頭炎,嘔気,頭痛がデュピルマブ投与群でより多い傾向にあった.重篤な副作用はプラセボ投与群で3例(気胸,足関節骨折,喘息の増悪)であり,デュピルマブ群で1例(双極性障害の増悪)であったが,薬剤との関連性はいずれもないと判断された.このようにデュピルマブの喘息に対する有効性が示され,プラセボと比較しても安全に使用できる可能性が示唆された.
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