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図63毛鞘嚢腫の基底細胞を中拡大で更に詳しく示したのが本図である.比較的大きな核(N),トノフィラメントの網(t)などが明瞭で,その間に散在または集塊をなす顆粒(G)はリボゾームか糖原である.両者の区別は後者がロゼットを作る場合以外は鑑別困難である.この細胞の基底側(BASAL)をよくみると,分岐した細胞突起が伸び,それを基底板の不連続なもの,または重層したものが取囲んでいる(B).基底細胞との間には半デスモゾームも作られている(d).基底板の重層したものの間には多数の細線維が集合している(*).これらは係留線維(anchoring fibril)の未熟なものと考えられ,その証拠に,その中にはかなり典型的なもの(矢尻)も混っている.基底板が増殖し,係留線維がそれにつれて増加する現象は,他の付属器腫瘍の周辺部,例えば円柱腫の実質と間質の境界部に著しい7).図62で基底細胞(B)と膠原(C)は直接に接触しているように見えるが,実は多くの腫瘍における如く,実質と間質のinteractionが行われていることがわかる.これは腫瘍がその本性である増殖を行って常に拡大しようとする場合,細胞分裂や本図に示した基底側(BASAL)より伸びる偽足により基底板が破壊され,その部分の修復が行われ,破れた墓底板の一部が後に残る.このような部分的な破壊と修復をくり返すうちに基底板の破片や重積が生ずる(b).基底細胞,特に腫瘍のそれは活発な代謝を営んでいるので,間質より栄養を取り込む必要があり,多数の胞飲小胞(pinocytotic vesicle)(p)が基底側に沿って並んでいる.一番右のものは細胞膜の陥凹により西洋梨状の小胞が形成されつつある像であり,その他は既に基底細胞内へ取込まれている.図の左側にみえる蜂窩状の構造は,その上にあるような細胞突起が退行変性を起こしたものと考えられる.×32,300
図64毛鞘嚢腫.図の左下半分に明調で糖原の抜けた細胞(S)があり,右上半分に角化の傾向を示すが線維束が密にならず,かつ核(N)を保持している不全角化の細胞がみられる(図61J参照).図の右下に一部がみえる細胞(K)は完全に角化して,内容は一様に電子密で,線維束をこの拡大で見分けることができない.明調細胞(S)と不全角化を示す細胞には多数の空胞(*)とケラトヒアリン顆粒(矢尻)が存在する(図61E,F参照).空胞は糖原の抜けたあと,或は不全角化の細胞ではセメントゾームやリゾゾームの細胞内貯留物が抜けたあととも考えられる.後者の多くは角化の直前に細胞外へ放出され,細胞間に拡散するが,毛鞘性角化の場合には拡散せずに集塊を作ったり(C-L),不全角化の細胞内に止っていたりする(図65—次号—参照).異常に長いデスモゾーム(D)が角化した細胞を接着している.
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