原著
Eccrine Ductcarcinoma
斎田 俊明
1
,
池田 重雄
1
Toshiaki SAIDA
1
,
Shigeo IKEDA
1
1東京大学医学部皮膚科学教室
1Department of Dermatology, School of Medicine, University of Tokyo
pp.575-585
発行日 1973年7月1日
Published Date 1973/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412201170
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75歳男子の陰嚢皮膚に原発し,リンパ節転移を来たした腫瘍に対し,各種組織学的,電顕的検索を実施し,次の結果を得た.組織像の主体は真皮結合織間に主に索状ないし小塊状に散在する腫瘍巣からなり,1部で管腔構造がみられ,又,一部表皮内ではPaget現象がみられた.腫瘍細胞は比較的小型であるが異型性大.細胞質はH-E染色で紫紅色にやや濃く染まり,PAS陽性物質を含み,その1部はdiastase抵抗性であり,微量のneu-raminidase消化性Hale陽性物質も証明された.また好酸性無定形物質もみられ,これはPAS陽性,diastase抵抗性.酵素組織化学的に腫瘍細胞はSDG,MAO,Ac-P-aseが中等度以上の陽性.Al-P-ase,ATPase,Ch-Ease,Feyrterともに陰性.電顕的には分泌顆粒様物質がみられ,細胞間には嵌合および分泌細管が観察された.これらの所見から本腫瘍をeccrine ductcarcinomaと診断した.
文献的に汗器官癌について検討し,かつ,汗器官腫瘍について,しばしば問題になるエックリン系とアポクリン系の区別および各汗器官における部位的区別に資するべく,正常汗器官の酵素組織化学的,電顕的所見等を比較整理し,若干の考察を試みた.
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