皮膚科学の流れ 人と業績・27
Caesar BoeckとJean-Louis Brocq
高橋 吉定
pp.750-753
発行日 1972年8月1日
Published Date 1972/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412201030
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Caesar Boeck
Cacsar Peter Moeller Boeckは1845年9月28日にノルウェーのLierで生まれた.クリスチャニア(オスロ)の医学校を卒業した後,数年間一般医となつていた.1874年にはヨーロッパ大陸におもむき,特にウィーンにおいて1年間皮膚科学と組織学とを勉学した.クリスチャニアに帰つてRikhospitaletの医員となつたが,やがてノルウェー大学のスタッフに加えられた.1895年には皮膚科学教授に就任した.
彼はきわ立つた教師であるとともに,非凡な臨床家であり,特に診断の名手であつた.彼のクリニックが非常に人気をよんだのは,一つには,彼の熱心さが評判となり,治療の巧妙さが喧伝されたからであつた.著者としては多くの外国雑誌に100を越える原著を発表したが,そのうちもつともよく知られているのは結核疹およびザルコイドージスに関する研究である.彼は,原因不明の大きな一群の皮膚病と結核との関係を明瞭に見通した最初の人であつた.1880年に彼は丘疹性壊疽性結核疹の1例を記載したが,それは結核疹を組織学的に特微づけたものであった.後年において彼はその研究的才能を主としてザルコイドージスに集中した.ザルコイドージスに関する彼の原著は,ノルウェーとアメリカとの雑誌に同時に掲載された.下に和訳する原著は,アメリカの雑誌にのつたものである.その論文に記載されているザルコイドージスの患者は,80歳まで生きのびて,1940年に死亡し(Boeckの死去は1917年)剖検に付せられたが,Boeckが治療して治癒と判定したザルコイドージスの本例においては,その病変の痕跡だに見付けられなかつた.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.