皮膚科学の流れ 人と業績・10
Jean Louis Marc Alibert
高橋 吉定
pp.998-1000
発行日 1970年10月1日
Published Date 1970/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200720
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近代科学的皮膚科学はまずイギリスにおいてWillanによつてはじめられ,そのあとを継いだイギリス学派は,19世紀半ばに近づくや,衰勢に陥つたことを前回までに述べた。ヨーロッパにおいてそれぞれ独立した学派を形成したものには,イギリス人のほかに,フランス人とドイツ人とがある。この3者がどういう立場で皮膚科学を興したか。これについては土肥慶蔵先生1)が次のように記している。"英,仏,独の3国民は近世科学の建設者にして,其史跡よりすれば,英人先ず唱へて,仏人之に和し,独之を行ひたりと謂ふを得べく,其国民性より観れば,英人は沈毅にして,其学問は実際より入りて,学理之に従ひ,仏人は聡明にして,其学問は学理より出でて,実地に入れり。而して両者の間に立ち,其短を捨て長を取り,之を大成したる者は即ち重厚なる独人なり。医学既に然り,殊に皮膚科学に於て最も然るを認む"。
ここにおいて,わたしは目をイギリスからフランスに転じようと思う。イギリスのWillanよりややおくれて世に出て,のち世界に覇を唱えるに至つた皮膚科学フランス学派を創始したのは,Jean Louis MarcAlibertであつた。土肥先生の記述2)によると,Alibertの皮膚科学における業績の大要は次のようである。
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