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Henry Radcriffe-Crocker
(前回の続き)
環状肉芽腫(Granuloma Annu-lare)3)
ここに明確な特性を共通に示す6症例があつて,一つの臨床群に属することに疑いない.その特性を総括すると,次のとおりである.徐々に発育する小結節あるいは丘疹で,集合しあるいは部分的に融合して環を形成するが,それを構成する小結節はなおも見分けがつくのである.発疹は徐々に退縮する傾向を示し,その場合環は切れて,しはしば三日月形のみ残るかあるいはいくつかの三日月形が融合すれば連圏状の局面をつくる.環の内側すなわち退縮した側は緩い傾斜をもつて正常皮膚に移行し,罹患していた部分にはしばらくの問わずかに赤味を残す.外縁はそれより峻しいが,円鋸歯状あるいは明瞭に小結節状を呈し,ときとするとごく狭い量のあることがある.発疹の着色は紫味がかつた紅色か,あるいはまつたく蒼白である.小結節は堅く,そのあるものはわずかに疣状を呈することもあるが,他のものは扁平でむしろ扁平苔癬を思わせる.分布は主として手根,手,指の背面であるが,頸部のこともあり,奇妙なことに少なくとも4例においては,丘疹は項部髪際に発生していた.また頭部において耳介の後,顔面の上部に見られた症例もあつた.男児においてのみ下肢に生じ,膝の上に見られたことがあつた.丘疹は,指関節,橈骨と尺骨との末端,その他骨隆起部に好発するようであるが,これに限るというのではない.男児における本症の特徴は,その他の者におけるほど明確ではなかつた.
わずかに涜状を示した発疹に関連して注目されたことは,2例において通常の痴贅が先行もし,共存もしていたことである.そして第4例においては本症の発疹が疵状狼瘡(Lupus verrucosus)に似た症状にまで進展したが,組織学的に疵贅の特徴を示さず,表皮の変化は僅少であつたのに比し,真皮における細胞浸潤ははなはだ顕著であつた.
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