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炎症とは,一般に動物組織に起炎物質も含めなんらかの有害な刺激が加わり,細胞の正常な代謝過程を障害するような因子が作用した際にみられる生体の反応であり,時間を追つて刻々と変化し,stateてはなくprocessといわれ,二次的な全身反応も考慮せねばならず,複雑な局所反応ともいえる.
皮膚科領域の炎症とて例外でなく,局所の障害に伴つて,まず体液調節物質あるいは抑制因子の活性化により各種のchemical mediatorが遊離される.これが血管の拡張および透過性の亢進を生起し,ついで白血球の粘着と遊走,血小板・赤血球の粘着,細胞の浸潤,増殖,さらには肉芽組織の形成,血管の新生という過程を経て治癒してゆく.ところで,この炎症の引き金は血管透過性物質とみなされ,アミン類(ヒスタミン,セロトニン),キニン類(プラスミン,カリクレイン,ブラディキニン),補体成分(補体第1成分,第3成分,第5成分),局所因子(アルサス透過因子,burns透過因子,lymphnode permeabilityfactor, permeability increasing factor)などが知られている.ことにアレルギー性炎症に際しては,抗原抗体反応によつて活性化された酵素系や補体による血管透過性亢進作用やchemotactic作用の存在が知られておりchemical mediator相互間の関係を解析しなければ,その本態を明らかにすることは難しく,今後の検討が待たれる現状である.ともあれ,炎症は古くから病理学の中心話題の一つであり,最近は抗炎症剤の開発につれ臨床各科でも炎症の生化学的研究が盛んになつてきた.私らも,徳島大学酵素研究施設の藤井教授らが合成された各種抗炎症剤をもちいプラスミン系と補体系の関連を検討し興味ある知見を得たので若干の文献的考察も加え報告してみたい.
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