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尋常性痤瘡(ニキビ)は,周知のように面皰,丘疹,膿疱,嚢腫,小結節などが通常種々の程度に入り混つている慢性の炎症性疾患である。丘疹が主であるか,膿疱が主であるかなどによつて,またおもな発生部位によつても,臨床的にいくつかの型にわけられている1〜3)。本症の診断は容易であるが,治療には実際上難渋することが多い。
本症の原因および誘発ないし悪化因子としては,古くから多種多様のものがあげられている(表1)。座瘡ないし面皰の形成機序については,従来から多くの説が唱えられているが,最近は角化亢進と皮脂排出の増加を一次的な因子とみなす人が多い。脂腺排出管内および毛漏斗部における角質増殖,ならびに脂腺機能亢進の2つは,座瘡発症基盤を形成しており,これに影響を与えるものは主としてホルモン,とくにandrogenであり,その他に遺伝的因子,物質代謝,ビタミン,肝機能,胃腸障害など各種の因子が関与している。本症患者では一般に皮脂排出は増大しており,かつ症状が重症になるにしたがつて皮脂量は増加するといわれる4)(図1)。また現在痤瘡を有しないが過去に有したことのあるものは,過去にも現在にも痤瘡を有しないものよりも,どの年齢層を比較しても,常に皮脂排出率は高い4)(図2)。しかし皮脂排出の過剰すなわち脂漏では必ずしも痤瘡を生じるわけではなく,それには角質増殖が関係している。この角質増殖過程は,内的因子の他,種々の機械的,化学的刺激などの外的因子によつてもよく反応する。角質増殖と脂腺機能亢進の両病因論的因子は,必ずしも並行関係になくてもよく,普遍的なacnegenesisは,両者の相対的関係においてこれを理解すべきものと考える。
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