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蛙の表皮基底膜については,Ottosonら7)が皮膚内に微小電極を挿入し,電極が表皮と真皮との境界を通過するときに電位差が発生することを認め,魅子顕微鏡像との対比より,基底膜が電位差発生の場所であるとしたように,当初は基底膜がイオン輸送の場所であるとされた。しかしKoefoed-Johnsen and Ussing6)は摘出した蛙皮の電位差と外液のイオン濃度との関係から次の仮説を提案した。すなわち1)細胞の外面(表皮側細胞膜)はNa+とLi+以外の陽イオンに不透性である,2)内面(真皮側細胞膜)はK+透過性であるがNa+に対してはNa+ポンプ以外は透過性が低い,3)Na+の能動輸送機構は内面にあつて細胞内のNa+と内液のK+とを交換する。また彼らは相当する細胞として,表皮基底の胚芽層(stratum germinativum)の細胞を考えた。すなわち表皮基底膜に接する細胞膜にNa+ポンプが存在するとしたのである。Farquhar and Palade1)はカエルとガマの表皮のcell junctionsを電子顕微鏡により観察し,またATPase活性を調べ,反応生成物の沈澱が表皮の全細胞間隙を満たすことを認めたが,胚芽層の基底側細胞膜にはまつたく活性を認めなかつたので,Ussingらのモデルを改訂してK+透過性はこの底面細胞膜にあるが,Na+K+交換ポンプは細胞間隙に面する膜に存在するとした(図1)。このように当初は基底膜またはこれに接する細胞膜にあるとされたNa+ポンプは現在では細胞の側面の膜にあると考えられている。これは光顕や初期の電顕では基底膜は薄く密なる膜として観察されたのが,電顕の分解能が高まるにつれて,より厚くまた粗なる膜であるとされ,イオンに対するbarrierであるとは考えられなくなつたためであろう。私は蛙皮のイオン輸送特にNa+の能動輸送に対する副腎皮質ホルモンの効果を調べ4),また蛙皮のNa+輸送の場所をオートラジオグラフイーにより追求したが5)皮膚のイオン輸送についてのこれらの知見から基底膜の性質を推察してみた。
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