〈原著論文抄録〉
成人の紅皮症—紅皮症の概念と分類とに関する考察,他
小林 健正
1
,
石井 孝男
1
1千葉大学医学部皮膚科教室
pp.703
発行日 1970年7月1日
Published Date 1970/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200686
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著者らは皮膚科学における概念としての紅皮症に関する歴史的変遷を概説し,それがもはや独立疾患ではなく,相異なる原因からも同じ症候像を取りうる症候群にすぎず,海外においては純症候学的特徴あるいは皮膚における一次的侵襲の部位によつて紅皮症を分類する試みがなされていることを論じた。
次に昭和34年より昭和42年までの9年間に千葉大学医学部附属病院皮膚科で加療した52症例の臨床および組織像を検討し,2例が悪性リンパ腫の紅皮症型(3.8%),10例がいわゆる紅皮症様皮膚疾患(乾癬4例〔7.7%〕,湿疹3例〔5.8%〕,毛孔性紅色枇糠疹2例〔3.8%〕,扁平苔癬1例〔1.9%〕),18例(34.6%)が中毒アレルギー性の浮腫・小水疱型(サルワルサン3例,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,ストレプトマイシン,サイクロセリン各1例,他の11例は惹起因子不明であり,そのうち1例はいわゆる術後紅皮症)を呈し,他に湿疹様皮疹が先行して旧に復さない17例とまつたく原因不明の5例があることを知つた。後2者は紅皮症の原因疾患が不明の例ともいうべく,著者の全症例の42.3%を占めた。しかし紅皮症がsui generisの疾患として論ぜらるべきでないことを例をあげて述べ,臨床的にはDegosのérythrodermies érythémato-squameuses sèchesとérythrodermies vesiculooedemateusesとのみを対立させる分類が便利であると考えた。
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