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入局まもなく「なにか得意分野を持ったほうが良い」と真菌班に入り香川三郎教授の指導を受けた.真菌班を選択したきっかけは,教授のベシュライバーのときに足白癬の培養を行ってうまくコロニーが生えてきたからである.相手はカビなのに生えてきたコロニーの形が白くほわほわして可愛らしい印象だった.まずは自分が診断した患者の培養は行うようにと言われ,せっせと培養をしたが今度はなかなか生えてこない.検体を採取する部位や培養のやり方にもコツがいるようだ.香川教授は「手取り足取り」というよりも「私のやり方をよく見ていなさい」という教え方だった.臨床,培養の写真の撮り方と出来映えに厳しく,なかなかほめてはもらえない.「どんな症例も学会で発表するつもりで写真を撮りなさい」と言われた.なるべくきれいに培養するように,写真は背景にも注意して仕上がりを考えて撮るように心がけた.少しは上達しただろうか.写真や培養をほめていただいたとき,珍しい菌が生えて興味深く話を聞いてくださったときは単純ながら俄然やる気が上昇する.小学生が良い点を取ると親にほめられて「がんばろう!」と思うのと全く変わらない.近年,学会では皮膚科医の鏡検能力が低下していると言われ,実際に培養できる施設も少ない.当科も例外ではない.自分が教えられたことを後輩にも伝えたいが指導するのは自分がやるよりも難しい.若手の先生は専門医取得のため日夜学会・勉強会の準備,外来・病棟業務を追われるように行い,自分の興味ある分野を見つける余裕もないのであろう.地味な仕事かもしれないけれど,鏡検や培養の手技は実は真菌症以外の診療にも役立つのですよ! 真菌の仕事をしてくれる先生を一年中大募集中である.
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