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「深切り」とは病理の先生たちが使用する言葉で「deep cut」とも呼ばれる.病理検体は通常,パラフィンで固められ(包埋),病理検査技師が薄くスライス(薄切)し,プレパラートにのせ,さまざまな染色(多くはHE染色)を行い,病理組織標本となる.深切り(deep cut)とは,パラフィン包埋された病理標本を通常の切り出し面から数えて,50枚目,100枚目,150枚目,200枚目の切片をプレパラートにのせ標本とすることを意味する.すなわち,提出された病理検体を深く切り込むことで,十分な検討ができる.一方,連続切片とは,順番に薄切すべてを病理標本にしたものであり,深切り(deep cut)とは異なる.
血管炎は,病理検体から得られた標本内の壊死性血管炎像を病気の中心に据えた概念である.したがって,標本内に血管炎像が認められれば,診断へ大きな一歩となるが,認められなければ,診断から遠のく.今まで,皮膚科では病理組織標本を十分に読み解くことから,血管炎の議論がスタートしていた.その病理検体が,どの時期にどの皮疹をどの程度,採取するかで,大きく所見が変わってしまう点には,あまり関心がなかったように思う.ところが,深切り(deep cut)をしてみると,通常の切り出し面ではみられない病理所見の変化が,ダイナミックに起こっていることに気づいた.さらに,2か所の皮疹を採取することでその精度が格段に増した.2倍以上の血管炎像検出率アップとなっている.そうなると,どの皮疹を皮膚生検すれば,よりきれいな壊死性血管炎像を検出できるかがわかってきた.その候補は,真皮下層から皮下脂肪織の壊死性血管炎であれば,皮内・皮下結節である.紡錘形に皮膚を切開,皮下脂肪織レベルまで接取,いじらずに病理部へ提出する.病理部へは,標本を長軸方向から面出しし,深切り(deep cut)の施行を指示する.さらに可能であれば,マッソン染色とエラスチカ染色も一緒にしてもらう.ぜひ,試してください.
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