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文献紹介 ヘルペスウイルスゲノムの宿主テロメアへの組込みを促進する繰り返し配列
横山 知明
1
1慶應義塾大学
pp.873
発行日 2011年10月1日
Published Date 2011/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103083
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テロメアは染色体の末端にみられる構造で,6塩基の特徴的な繰り返し配列(telomeric repeats:TMRs)を持つDNAと,さまざまな蛋白質で構成される.テロメアは複製による染色体の短縮や他の染色体との融合を防ぐ役割をしている.Marek's disease virus(MDV)はヘルペスウイルス属の2本鎖DNAウイルスであり,鶏に感染してMarek病を引き起こす.MDVはそのゲノムの末端に,TMRsと同一の繰り返し配列を有する.TMRs変異MDVを作製し鶏に感染させたところ,感染鶏のマレック病発症率は有意に低下した.野生型MDVのゲノムが宿主のテロメアへ組込まれたのに対して,変異MDVは染色体内に組込まれた.さらに変異MDVでは,ウイルスの再活性化が有意に阻害されていた.以上の結果より,MDVがTMRsを利用して宿主テロメアへ組込まれることで,効率的な再活性化を可能にしていることが明らかとなった.
HHV-6など他のヘルペスウイルスにもTMRsが存在することから,TMRsによるウイルスゲノムの組込みが,保存されたメカニズムであることが推察された.HHV-6は,薬剤過敏症症候群において再活性化することが知られているが,そのメカニズムの一端を明らかにした興味深い論文と言える.
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