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文献紹介 PTIPによるクロマチンの構造変化は免疫グロブリンのクラススイッチに重要である
和田 直子
1
1慶應義塾大学
pp.446
発行日 2011年5月1日
Published Date 2011/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412102959
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ヒストンは長いDNAを巻き付けて核内に収納する蛋白である.近年,ヒストンはメチル化などの修飾を受けてクロマチン凝集やDNAへのアクセスしやすさが変化することによりDNAの転写を調整する機能があることがわかってきた.PTIP(Pax interaction with transcription-activation domain protein-1)はヒストンをメチル化する酵素複合体の構成要素である.著者らはマウスを用いて免疫グロブリンのクラススイッチにおけるPTIPの役割を検討した.クロマチン免疫沈降シーケンシング法による解析の結果,野生型B細胞の免疫グロブリンH鎖遺伝子領域に結合するメチル化ヒストン(H3K4me3)はLPS刺激による活性化で増加するが,PTIP欠損B細胞ではその増加が認められなかった.さらにPTIP欠損B細胞ではIgM転写産物は量的に正常だがIgG3,IgG1は著明に減少,G領域DNAへのRNAポリメラーゼ結合の減少も認めた.またPTIPは転写調節以外にもDNA切断部に集合しゲノムを安定化することによってクラススイッチに寄与することが示された.PTIPの関与するクロマチンの変化はクラススイッチすなわち抗体のエフェクター機能の変換において重要であることが示唆された.
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