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文献紹介 JAK3の阻害がCD18突然変異PL/Jマウスの乾癬様皮膚炎症を著明に弱める
星野 洋良
1
1慶應義塾大学
pp.51
発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412102796
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ヤヌスキナーゼファミリーの一種であるJAK3は,主に造血系細胞に発現しており,IL-2,IL-4,IL-7,IL-9,IL-15,IL-21を含むサイトカインレセプターのサブファミリーの共通γ鎖に特異的に結合する.従来の研究では,切歯動物モデルにおいて,このチロシンキナーゼはT細胞の機能を媒介するのに重要な役割を担い,JAK3の阻害は移植片拒絶を避け,関節炎を改善することが示されている.しかしながら,乾癬のような皮膚の免疫反応の進展におけるJAK3の機能は確定されていなかった.CD18ミュータントPL/Jマウスは生来T細胞依存性の乾癬様皮膚病を呈しており,ヒトの乾癬とも類似点を持つ.この研究においては,JAK3の分子標的薬であるR348を用いてこの乾癬モデルマウスを取り扱い,6週間で著明な皮膚病変の減少を見た.また,組織学的分析により,無投与コントロール群に比べR348治療群では,表皮・真皮における重症度スコアが大きく減ったことが明らかになった.これはR348によるCD4+,CD8+T細胞の減少,さらに特に活性化されたT細胞の抑制によるものと考えられた.加えて,全身レベルでのTh17関連サイトカイン(IL-17,IL-22,IL-23など)は,治療を受けたマウスでは著明に減少しており,それらのマウスから抽出されたT細胞は,IL-2による刺激後のStat5のリン酸化反応を減ずることもまた示された.これらの発見は,JAK3の分子阻害薬が,乾癬のような炎症性皮膚疾患の治療に役立ち,JAKのシグナルが乾癬の発症機序に強く関わっていることを示すものである.
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