- 有料閲覧
- 文献概要
これまでどちらかというと美容医療無関心派の一人であった私が,医局の人手不足のあおりを受けてレーザー照射によるシワ取りの臨床試験を行うことになった.本号の中に掲載されているように多くの女性被験者に協力していただいた.被験者のほとんどは30歳代後半~50歳代である.某企業による新成人へのアンケートよると30歳代以上の女性はオバサンと呼んでも差し支えないようであるので,ここからはあえてそう呼ばせていただくことにする.大学の倫理委員会の規定で,被験者をポスターにより公募することになった.やや大きく印字した「無料」という文字が功を奏したのか,問い合わせが殺到した.これが私のオバサン騒動記の始まりであった.ポスターには「対象は顔面のシワ」と明記してあるのにもかかわらず首や手背,極端な例では妊娠線にやってほしいと頼む人がいた.何より妊娠線はシワの一種と考えている女性がいることに驚いた.週末にやってほしいと頼まれるのはやむをえないが,「従業員4人で受けるので,お店に出張して来て欲しい.」とか,いったい何のお店だったのだろう? お化粧を落としてきてもらいますと説明したとたんに,「それでは辞退します.」とか,スッピンはそれほど怖いものでしょうか? 締め切り終了後の申し込みに丁重にお断りしたら「XX先生の紹介なんですが…」とか,公募に紹介なんてあるのでしょうか? 必然的に電話連絡の段階で,ある程度の淘汰がなされて,比較的性格の良い人が残ったような気がしないでもないが…
実際の試験では,頻繁に比較写真を提示するなどして被験者のモチベーションを維持することに努めた.なかに1名,いわゆるオバサン性格の人がいた.ほかの被験者のシワが改善していくなかでその人はなかなか改善しなかった.性格と改善には相関がある,などと本気で考えていたのであるが,オバサンの執念か最後の段階になって目に見えて改善してきた.ただし,本人は効果に納得がいかない様子で,来院するたびに第一声が「全然良くならない.」であった.最終的な比較検討結果で著明改善であったと説明しても,やはり納得できない様子であった.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.