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2003年の夏,われわれの外来にも電子カルテが導入された.当初はこの急激な進化についていかれず,文字どおり四苦八苦した.以前のように自由に絵を描き込むことができない.マウスで不器用に震える曲線を描いても,時間をかけたわりにはイメージとかけ離れたシェーマができ上がる.通常のカルテ記載のほか,予約,各種検査,注射や処置,病名登録など,書いたほうが早いオーダーもすべてコンピュータで出すため,これまで以上に時間がかかる.一番悩まされたのは,キーボードを打つタイミングである.患者と話しながら打とうとすると,つい画面をみがちになり,目を合わさずに診療を終わらせてしまいかねない.とはいえ,患者に向かいながら手だけキーボードを打つのも,気もそぞろのような印象を与えてしまう.患者と話し終わってから打つのでは,時間がいくらあっても足りない.患者に不快感を与えず,かつ素早く必要事項を記載するにはどうすればよいのか.試行錯誤を繰り返し,最近気づいたことは,短時間でも,皮疹をきちんと診察し,患者の目をみて話すよう心がけると,多少画面に向かう時間が長くても患者はあまり不快に感じないということだ.最近は,医師も患者も電子カルテに慣れ,一緒に画面をみながら打つこともある.
導入から1年以上経過し,作業の煩雑さに慣れてから改めて振り返ると,電子カルテが多くの点で紙カルテに優ることがわかる.項目ごとに整理され,経時的なデータ整理をするには非常に便利である.他科のカルテもその場で参照でき,データを共有できるため連携がスムーズになった.また,診療時間以外にカルテをみたいときも,わざわざカルテ室まで足を運ぶ必要はない.人件費削減,保管場所の縮小なども大きな利点である.今後は電子カルテが主流になることは確かだろう.しかし,1日中画面に向かっていると,肩は凝るし,目が疲れる.早急にドライアイ対策をしてもらわないと,そのうち医師は全員,充血してしょぼしょぼした目で診察をすることになるのではないか,と眼科に通いながら考えている.
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