特集 急性感音難聴
5.ムンプス難聴
福田 諭
1
1北海道大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
pp.856-861
発行日 2002年11月20日
Published Date 2002/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902639
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.ムンプスについて
1.概念・病因1,2)
ムンプスは「流行性耳下腺炎」,「おたふく風邪」とも呼ばれる急性ウイルス性伝染性疾患である。原因はムンプスウイルスで,ヒポクラテスの時代より,耳から頬部にかけての腫脹を認め,さらに睾丸の腫脹を伴う疾患であることが記載されている。1934年に本疾患がウイルスによって起こることが証明され,このウイルスはパラミキソウイルス群に属するRNAウイルスである。血清型は1つでヒトのみが感染する。
感染形式はヒトキャリアよりの飛沫などによる直接接触感染で,ウイルスは呼吸器上皮細胞に侵入し,鼻咽頭粘膜上皮で一次増殖し,次いで所属リンパ節でさらに増殖してウイルス血症を起こし,全身の易感受性の臓器に感染が拡大する。易感受性の臓器としては腺組織と中枢神経系が挙げられ,腺組織としては唾液腺,膵臓,睾丸,副睾丸,卵巣などが,中枢神経系の1つに内耳(蝸牛,前庭)が挙げられる。年長児や成人では症状が強いとされる。ウイルスは唾液,脳脊髄液,血液,尿から分離される。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.