特集 難治性副鼻腔炎の治療
1.副鼻腔炎の難治化因子
夜陣 紘治
1
,
竹野 幸夫
1
,
石野 岳志
1
,
古城門 恭介
1
1広島大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.587-590
発行日 2002年8月20日
Published Date 2002/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902598
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はじめに
通常,“上気道”という言葉を用いるときは固有鼻腔から咽頭,喉頭を経由して気管,気管支へとつながる1本の経路を思い浮かべがちであるが,実際には副鼻腔もその経路の中に深く組み込まれている。“いわゆる”上気道と副鼻腔との密接な関係はわれわれが一般的に思っている以上のものがあり,Gwaltneyらによると,急性感冒(上気道炎)症例の90%近くには副鼻腔にもCT上で何らかの炎症性変化が観察されたと報告している1)。慢性副鼻腔炎はこの中でも最も代表的な疾患であり,その病態成立の中心となるものは従来より,「急性炎症の反復と副鼻腔排泄路の閉塞」による悪循環と考えられている。しかし,その臨床病態は,近年わが国で大きく変貌しつつあることが報告されている。すなわち,従来のいわゆる(細菌性)化膿性副鼻腔炎に変わり,何らかの形で(鼻)アレルギーや好酸球浸潤が病態の遷延化に関与する新たなタイプが増加してきていることである。しかし,この両者間における重複点と相違点,さらには炎症の遷延化や難治化に果たしてどのような因子が関与しているのかなどについては不明な点が多々存在している。
本稿では,当教室において副鼻腔を構成する細胞の中で,1)骨組織を構築する骨芽細胞と破骨細胞,2)粘膜組織における上皮細胞と炎症浸潤細胞とに着目し,病態の遷延化との関連性や鼻アレルギーとの関係について一連の検討を行ったので紹介する。
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