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中耳における感染防御機構
氷見 徹夫
1
,
播摩 谷敦
1
,
光澤 博昭
1
,
山崎 徳和
1
,
小西 正訓
1
1札幌医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.576-587
発行日 2001年8月20日
Published Date 2001/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902404
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はじめに
中耳炎の発症に細菌感染が関与していることは疑いないことであるが,滲出性中耳炎や反復性中耳炎の病態形成にどのような外的因子,生体側の因子が関与しているのか,完全に解明されているわけではない。さらに,抗生剤の登場により中耳炎を含む感染症の制御が可能となるであろうとの考えも,多剤耐性菌の出現により,さらに大きな臨床上の問題点を抱えることになった。いうまでもなく中耳や上気道での感染制御は,耳鼻咽喉科臨床で解明すべき重要な課題であることは現時点でも変わることがなく,新しい治療戦略の確立が望まれる。このためには全身的な生体防御機構のみならず,中耳局所における感染防御機構を理解することが必要であろう。
中耳という解剖学的に特異な構造をもつ臓器での炎症成立には,鼻咽腔での細菌の増殖,耳管を経由しての細菌の進入など様々な過程が必要である。しかし,実際の中耳炎発症には,中耳局所粘膜と細菌の相互作用による初期免疫反応が重要である。この感染初期に中耳ではどのような生体防御機構が働くかを知ることは,中耳炎発症という最も基本的な病態解明につながる。
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