トピックス 補聴器とその適合
6.人工内耳の適応と限界
伊藤 壽一
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1京都大学大学院医学研究科感覚運動系病態学講座耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
pp.827-831
発行日 2000年11月20日
Published Date 2000/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902265
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はじめに
人工内耳は,補聴器でもことばの聞き取りが不十分な高度の感音性難聴者,および聾者に対し,内耳に電極を挿入して聴神経を直接電気刺激し,ことばの聞き取りを回復・獲得せしめるものである。現在,世界各国で使用されている多チャンネル型人工内耳が臨床応用されて20年以上経過する。人工内耳手術を始めた当初,手術の対象は,補聴器を用いてもことばの聞き取りのできない高度難聴者で,しかも成人の中途失聴者に限られていた(表1)。人工内耳は,現在でもさらに改良が加えられている発展途上の医療であり,人工内耳の改良に伴い,手術の適応も小児,残存聴力のある者へと拡大してきた。小児に関しては,1990年に米国が2歳以上の小児に対する人工内耳手術を承認し,世界各国で小児に対して積極的に人工内耳手術が行われるようになった。わが国で人工内耳手術が開始されてから既に15年以上が経過する。以来,手術の適応も徐々に変化している。現在,多くの施設で採用している手術適応は,1998年に日本耳鼻咽喉科学会が設けた適応である(表2)。大多数の人工内耳手術施設では,概ねこの基準に沿って手術適応を決めていると思われる。小児に関しては,1991年に最初の人工内耳手術が施行されて以来,年々その数は増加傾向にある。
本稿では人工内耳手術に対する手術の適応およびその限界,問題点につき述べる。
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