特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の新しい器械,器具
Ⅵ.その他の器械
1.人工内耳
伊藤 壽一
1
1京都大学大学院医学研究科耳婦咽喉科・頭頸部外科学教室
pp.135-139
発行日 2001年4月30日
Published Date 2001/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902359
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はじめに
音の機械的振動は,基本的には中耳から内耳に伝達され,内耳の有毛細胞が活動し,その活動電位が蝸牛神経を通して脳幹の蝸牛神経核からいくつかのシナプスを代え,最終的に大脳皮質の聴覚一次領野に伝達され,ここで初めて「聞こえた」と認識されるわけである。さらに,この音感覚を例えば「ことば」として認識するためには,大脳皮質の聴覚連合野と称される部位に伝えられ,そこで複雑な情報処理がなされる必要がある。この聴覚路のどこに障害があっても難聴が生じるわけであるが,実際には蝸牛神経より中枢側の原因で難聴が生じることは比較的少なく,ほとんどの難聴は中耳,内耳を含めた部位の障害によって起こる。このうち,中耳より末梢側の原因で生じる難聴に対しては「鼓室形成術」,その他の治療で回復が可能である。
一方,内耳の原因で生じる難聴に対しては,従来より補聴器が使用されてきたが,補聴器も使用できないほどの高度難聴および聾者に対しては,これまで有効な治療手段がなかった。これに対し,1960年代の後半から1970年代にかけて開発された「人工内耳」が,現時点では内耳が原因で生じる高度難聴に対する唯一の治療手段となっている。
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