目でみる耳鼻咽喉科
肩甲下動静脈茎複合皮弁による頭蓋顎顔面硬性再建
西川 邦男
1
,
冨永 進
1
,
門田 伸也
1
,
森下 常磐
1
,
永田 基樹
1
1国立病院四国がんセンター耳鼻咽喉科頭頸部外科
pp.318-319
発行日 2000年5月20日
Published Date 2000/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902184
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肩甲骨皮弁の最大の特徴は,肩甲回旋動静脈の一対の血管柄で皮弁と骨弁を同時に挙上できるところにある。肩甲回旋動脈皮枝は,水平枝(肩甲枝),垂直枝(傍肩甲枝),上行枝に分枝し,おのおのを用いて肩甲皮弁,傍肩甲皮弁,上行肩甲皮弁が挙上できる。皮枝と骨枝はおのおの独立しているため,目的に応じて皮弁,骨弁,骨皮弁として採取でき,その立体的自由度は大きい。また,骨枝とは別に肩甲骨下角を直接栄養する角枝を温存し,骨枝との二重血管茎とすれば骨弁遠位端の血行は安定し,2か所で骨切りしても良好な血行のある最大14cm前後の肩甲骨を挙上できる。さらに肩甲下動静脈を血管茎とすれば,広背筋(皮)弁や前鋸筋皮弁を複合させることができ,肩甲下動静脈茎複合皮弁として多種多様の欠損修復に対応できるので,複雑な形態と機能が要求される頭蓋顎顔面硬性再建に適している。
肩甲下動静脈茎分割肩甲骨皮弁による上顎再建術式は,角枝により栄養される肩甲下角骨と骨枝により栄養される外側縁骨による眼窩下壁および頬部〜顔面口蓋骨の同時骨再建である。すなわち,肩甲皮弁および傍肩甲皮弁の2皮弁と肩甲骨外側縁から下角によって構成される肩甲骨皮弁を使用し(図1),肩甲下角骨にて眼窩下壁から下縁を,肩甲外側縁骨にて頬部から顔面の骨性隆起を再建し,皮弁で鼻腔側壁および口蓋を再建する(図2)。良好な顔面形態を維持するためには,①眼窩内容と下眼瞼下垂の防止のための眼窩下壁および下縁再建,②頬部の骨性隆起の再現,③歯槽弓の再現に重点を置くことである(図3)。
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