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はじめに
鼻粘膜の反応には自律神経系の関与が重要である。例えば鼻アレルギーの場合,症状はくしゃみ,水性鼻汁,鼻閉である1)。鼻アレルギーのこれらの鼻症状は,抗原刺激によって肥満細胞から放出されたヒスタミンによる知覚神経刺激で神経反射性にくしゃみや鼻汁の増加が起こったり2),その症状発現にいろいろな実験結果から他の自律神経も関与することが分かっている3)。花粉症患者では季節に鼻粘膜の過敏性が亢進し,メサコリン,bradykinin(BK)の反応性が増加している4)。このように鼻アレルギーにおける症状発現には神経系,特に過敏性に関して求心性知覚神経系が重要であり,そのneuro-transmitterである各種の神経ペプチドに関与している。以上はアレルギー反応の制御にはそのペプチド活性の調節機構が重要であることを示している。鼻粘膜や下気道における別の気道過敏性亢進状態でも,神経ペプチド,特に迷走神経sensory endingで無髄のC線維に局在するsubstance P(SP)5)や副交感神経の神経伝達物質であるvasoactive intestinal peptide(VIP)6)の役割の重要性が唱えられている。気道過敏性亢進の機序はこれだけではないが,これら神経ペプチドとペプチド分解酵素のバランスが関与していることは紛れもない事実である7)。病的な状態だけでなく,正常な気道反応においても確実に酵素は分泌されており,それにより分解されるペプチドが気道に存在することも必然である。
本稿では,鼻粘膜に存在するこれら神経ペプチドを分解する酵素の正常,鼻アレルギー,上気道過敏性亢進における存在とその役割について,鼻粘膜における酵素活性,組織学的局在やアレルギー症例への抗原誘発,正常人へのメサコリン,ヒスタミン誘発での鼻粘膜洗浄液中の酵素活性測定などわれわれの実験結果をもとに考察する。
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