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蝸牛内リンパ直流電位(Endocochlear resting potential:EP)の発生機構—歴史と今後の展望
小宗 静男
1
1宮崎医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.157-168
発行日 1998年3月20日
Published Date 1998/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901733
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はじめに
人蝸牛は骨迷路の一部をなし,カタツムリに似た2回転半の構造をしており中にリンパ液を入れている。このリンパ液は,さらに膜迷路によって内外リンパ液に分かたれている。膜迷路によって蝸牛は前庭階,中央階,鼓室階の3つの区画に分けられるが,前庭階と鼓室階は外リンパ液を入れており蝸牛の先端(頂回転)で繋がっている(蝸牛孔:helicotrema)。中央階には内リンパ液が満たされている。蝸牛膜迷路(蝸牛管)は主にライスネル膜(Reissner's membrane),コルチ器(organ of Corti),血管条(stria vascularis)によって構成され,前庭階と中央階はライスネル膜で,中央階と鼓室階はコルチ器で境され中央階外側に血管条がある(図1)。蝸牛内リンパ直流電位(endocochlear resting potential:EP)はこの血管条から産生されると考えられている。EPは,蝸牛中央階に存在する約80mVの正の静止電位であり,蝸牛における音情報の機械電気変換過程においてなくてはならないprimary batteryとして極めて重要な電位である。本論文ではEPに関する研究の歴史をたどりながら,その現況とこれからの展望について私見を述べてみたい。
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