鏡下咡語
手術の修練—偶感
星野 知之
1
1浜松医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.896-897
発行日 1996年10月20日
Published Date 1996/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901445
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耳鼻咽喉科の修練において手術をどの程度に研修プログラムに入れるのか。専門医になるまでの研修の目やすは示されてはいるが,実際にどのように行われているのかあまりはっきりしていない。筆者は特に耳科学に関連する手術の修練に関心があり,学会などの折,他の施設の方との会話で時々話題にもするが,全体としてガイドラインを作るほどには煮つまっていないし,さしせまってもいないようである。
欧米ではアブミ骨手術をレジデントの期間にいかに修練したらよいかが,重要な問題としてとりあげられ論じられている。1960年代には毎週毎週60例もの手術を行う耳科医がいて,1970年代のはじめ頃までは症例が多かったが,次第次第に数が減り,レジデントの研修にも支障がでるほどになっているという。良い適応となる症例を手術しつくしたことと,手術を手がける医師の増加,さらにレジデントの手術の守備範囲であった保険の患者を,一般の耳科医までが次第に扱うようになってきたことなどが原因としてあげられている。1988年のヒューストン・ベイラー大学の報告では,レジデントは年2〜3例を手術するだけ。1991年のオハイオ州クリーブランドクリニックの耳科医G.Hughes (彼は耳科学の教科書も書いている耳の専門医である)の報告では,彼自身年に9例のアブミ骨手術をするだけだという。手術の腕の保持には年8例以上の手術をする必要があると考える者があり,レジデントのみならず耳科専門医にとってもゆゆしき状態という。
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