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頭頸部癌における染色体,遺伝子異常研究の現況
佃 守
1
1横浜市立大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.751-766
発行日 1996年9月20日
Published Date 1996/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901421
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はじめに
頭頸部癌は大部分が扁平上皮癌で,比較的放射線治療に感受性が高く,そのため早期に見つかると喉頭癌のように予後の良い癌もある。その一方で進行して発見される症例も多く,根治治療である手術,放射線治療にさらに化学療法や免疫療法を加味した集学的治療が施行されている。しかし下咽頭癌を筆頭に頭頸部進行癌の予後は悪い。
予後を左右する因子としてはPerformance status,免疫学的背景などの宿主の因子,さらに病理学的因子,臨床病期などの腫瘍因子,さらに治療形態などの因子がある。また近年,細胞そのものの特性を研究し,予後との関連性が検討されている。すなわち腫瘍細胞のDNAの異型性を見るDNA ploidy pattern,またcell cycleから細胞増殖性を検討するpotential doubling time (T pot),proliferative index,proliferating cell nuclear antigen (PCNA),Ki67 proliferation antigen検索などの手法が取り入れられてきた(表1)。さらに最近の分子生物学的手法の進歩に伴い,腫瘍細胞の生物学的特性をより詳細に把握する目的で腫瘍増殖因子,転移因子を腫瘍そのものの染色体,遺伝子の異常から研究し,その異常と病理,臨床像との関連性が検討され始めている。そこで今回,頭頸部扁平上皮癌の染色体や遺伝子の異常に焦点を当て,その現状を概説する。
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