特集 生検の進歩
II 生検に応用できる技術
5 癌遺伝子—3 染色体と癌遺伝子
杉山 武敏
1
,
前田 盛
1
,
北沢 荘平
1
Taketoshi SUGIYAMA
1
,
Sakan MAEDA
1
,
Sohei KITAZAWA
1
1神戸大学医学部病理学教室
pp.1389-1393
発行日 1987年10月30日
Published Date 1987/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913497
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はじめに
染色体研究が癌の研究の中で大きな位置を占めるようになったのは,1980年以降のことである.1970年前後の染色体分染法の開発は,癌細胞の染色体構成の科学的解析を初めて可能にした.一方,染色体の研究は顕微鏡形態学の世界であり,遺伝子とは程遠い世界であったが,姉妹染色分体交換やin situ hybridization(分子雑種法)の導入,あるいは癌遺伝子研究で分子の世界と連結した1〜3).
遺伝子解析法の進歩により,哺乳類細胞のDNAにもRNA腫瘍ウイルスの造腫瘍遺伝子と塩基配列の相同な遺伝子,細胞性癌遺伝子c-oncの存在することが示された.癌の染色体異常の意味については,Burkittリンパ腫のt(8;14)転座切断端に癌遺伝子c-myc,IgHの遺伝子が存在し,この異常がc-oncの発現に関与していることが証明され,染色体と細胞癌化の分子機序が完全に連結した.
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