鏡下咡語
Tan氏の脳
本庄 巖
1
1京都大学耳鼻咽喉科
pp.426-427
発行日 1996年5月20日
Published Date 1996/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901365
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私達は現在,遺伝子治療,臓器移植をはじめ爆発的ともいえる医学の進歩の中にあるといえる。また聖域とされてきた脳の研究にも光が見えはじめている。そのため私達はややもすると,今日の高い医療水準が以前から達成されていたと錯覚し勝ちである。しかしよく考えてみると,抗生物質や抗結核剤が世に出たのは第二次大戦後の,たかだか50年ほど前のことに過ぎない。それまで永く人類は感染症に苦しんで来たのであり,結核が不治の病であったのは衆知の通りである。
さて医学部では医学の歴史,いわゆる医学史が講じられることはあまりないためか,私達をとりまく近代医学というものが,実はこの100年あまりの短かい歴史でしかないことを,私自身も知らずに過してきた。そこでここでは,最近読んだいくつかの書物を通して,私自身の驚きも含めていくつかのエピソードを紹介してみたい。
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