鏡下咡語
朋友としての患者
酒井 俊一
1
1香川医科大学
pp.58-59
発行日 1996年1月20日
Published Date 1996/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901301
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■上顎癌第1例の患者さんと35年間のおつきあい
筆者が大阪大学病院耳鼻咽喉科に入局したのは昭和29年であった。2年後に主任教授が交代され,筆者は若輩にもかかわらず,上顎癌の治療を任されることになった。Cさんは筆者が初めて治療した上顎癌患者であり,38歳男性,高知県中村市で小学校の教員をしておられた。3か月前から左鼻閉に気付き,最近頬部腫脹,疼痛,悪臭の血性鼻漏を訴え,歯痛もあったため某歯科医を受診し,抜歯をうけたが軽快せず,1か月前から口蓋に腫脹を来した。
昭和31年11月24日初診 左鼻腔には大きな鼻茸,下鼻道が腫瘍性に膨隆,硬口蓋左半は膨隆し,その中央は潰瘍形成,X線像により左上顎洞に陰影,眼窩底,頬骨の骨破壊,T3NOMO,口蓋から試験切除した病理組織の結果,扁平上皮癌と診断された。
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