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われわれは気管支喘息患者に合併する,非常に難治な中耳炎に注目してきた1,2)。過去の文献にはまとまった報告を認めないが,その難治性はきわめて特徴的である。ここに,これまでわれわれが経験した7例の中から代表的所見を供覧する。中耳炎の臨床像の特徴は,1)両側性,2)中耳疾患の既往はなく20〜40歳代に発症,3)ニカワ状あるいは固体に近く除去しにくい中耳内貯留液,4)換気チューブではコントロール困難,5)進行例では高度の内芽形成を伴う,6)手術を行っても粘膜に再び同様な病態を生じる,などである。初期には難治の滲出性中耳炎の病像であり伝音難聴を呈するが,次第に広範かつ高度の肉芽形成を生じ,7例中5例では経過とともに骨導閾値の悪化をきたし,2例3耳は聾となった。中耳貯留液スメアより好酸球が検出され,中耳手術時採取した肉芽・粘膜などにも多くの好酸球浸潤がみられた。また6例には副鼻腔炎の合併がみられ,鼻腔粘膜・鼻茸に著しい好酸球浸潤がみられた。7例の気管支喘息のうち5例は成人発症で,3例はあきらかなアスピリン喘息である。一般に血清中の総IgEは高くなく,また通常のアレルゲンに対する特異的IgEも多くは陰性である。今回の一連の症例では気道系の好酸球浸潤を特徴とする同様な病態が中耳に生じているものと考えられ,好酸球性中耳炎(Eosinophilic Otitis Media)という名称を提唱したい。喘息はないが鼻アレルギーを合併した同様の報告もなされている3)。
治療は滲出性中耳炎に準じた薬物療法や換気チューブを行うが抵抗性である。ステロイドの全身投与により鼓室の粘膜腫脹が改善し,貯留液が減少し,感音難聴の進行防止効果がみられた症例がある。治療法はなお今後の検討を要するが,内科医と相談のうえ,十分なステロイドの全身投与をするのが現時点では最良の治療と思われる。
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