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はじめに
悪性リンパ腫はHodgkin病(Hodgkinリンパ腫としてもよいのであるが,国際的な慣例としてHodgkin's diseaseとされているので本稿ではHodgkin病とする)とnon-Hodgkinリンパ腫に大別される。両者とも発生部位は基本的にはリンパ組織であるが,発生した組織部位により,リンパ節(節性,nodal)とリンパ節以外の組織(節外性,extralnodal)とに分かれる。Hodgkin病では節外性は非常にまれであるが,non-Hodgkinリンパ腫ではWaldeyer輪,胃腸管などに多く発生し,全non-Hodgkinリンパ腫に占める割合は約40%といわれる1)。また,両者は生物学的にも異なった性格を有している。Hodgkin病では放射線と化学療法に高い感受性を示すが,non-Hodgkinリンパ腫では亜分類によりそれらに対してさまざまな程度に感受性が異なる2)。Hodgkin病は欧米では多く,全悪性リンパ腫の約半分を占めるが3),日本では少なく,腫瘍としての性格も異なるようである4)。すなわち,Hodgkin病は人種間で発生頻度も生物学的特性も異なる。また,最近では,Hodg—kin病ではその発癌過程にBurkittリンパ腫培養株から分離され,Burkittリンパ腫の起因ウイルスである5)Epstein-Barr virus (EBV)が40〜50%の症例に関与しているとの報告が多く出されており,ウイルス学的にもその可能性は高いが6),non-Hodgkinリンパ腫では特殊なリンパ腫(Burkittリンパ腫,Ki-1(+)未分化大細胞型リンパ腫)とAIDS関連リンパ腫6)とを除き,EBVの陽性率はたかだか10%程度であり,その組織発生に直接的な関係は薄いと考えられる。
Hodgkin病とnon-Hodgkinリンパ腫とは臨床的にも病理概念的にも厳然と分けられるべきであると著者は考えているが,現実的には,病理組織学的にも生物学的にも境界領域病変は存在する。免疫学的(免疫組織学的)にもそのことは実証される。本稿では耳鼻科領域の悪性リンパ腫を念頭におき述べていくが,まず,本稿で免疫学的説明で頻繁に使用するcluster differentiation(CD)を概説し,総論的にHodgkin病,non-Hodgkinリンパ腫の組織型と特殊型を最近の知見をまじえ述べていきたい。
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