病気のはなし
悪性リンパ腫
栗田 宗次
1
1愛知県がんセンター外来部
pp.680-685
発行日 1982年8月1日
Published Date 1982/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202550
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
悪性リンパ腫はリンパ節や扁桃,粘膜内のリンパ濾胞などのリンパ組織に原発し,リンパ組織を構成する細胞に由来する腫瘍である.リンパ組織には実質細胞であるリンパ系細胞と,支持細胞である細網細胞と結合織や血管などがある.リンパ系細胞は免疫担当細胞であり,細胞性免疫に関与するT細胞と免疫グロブリンを産生して液性免疫に関与するB細胞に大別される.
B細胞とT細胞はともに形態学的には同様な小リンパ球と抗原刺激による芽球化現象により大型細胞(大型類リンパ球),さらに免疫芽球に転換する.この転換はT細胞が濾胞周辺の傍皮質領域,B細胞ではリンパ濾胞内で生じ,B細胞では核の切れ込み,陥凹の変化をも伴い,種々な細胞形態を呈する.このように形態の異なる各段階における細胞の腫瘍性増殖が悪性リンパ腫の各組織分類に相当する細胞型である.芽球化現象による大型細胞は,かつて細網細胞,あるいは組織球に由来すると考えられたが,近年の免疫学の進歩によりリンパ系細胞であることが明らかとなった.真の細網細胞に由来する悪性リンパ腫はほとんどないか,あっても極めてまれと考えられる.ホジキン(Hodgkin)病にみられるホジキン細胞,リード・ステルンベルグ(Reed-Sternberg)細胞の由来は,B細胞,T細胞,あるいは組織球などの諸説があり確立していない.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.