トピックス 聴力改善手術
聴力改善手術—まえがき
八木 聰明
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1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.1053
発行日 1990年11月20日
Published Date 1990/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900187
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聴力改善手術という複合語に対応する欧米の単語は,成書や論文にあまり登場しないようである。たとえば,日本語訳の題名が「聴力改善手術」となっているWullsteinの書物の原題は,Opera—tionen zur Verbesserung des Gehöresと言うように一つの言葉ではない。この聴力改善手術と言う複合語は,あるときには非常に便利であり内容を良く表現するが,時によっては誤解を生むことがある。すなわち,聴力改善を目的とした手術,あるいは聴力改善が期待される手術と一般には解釈されるが,聞く者によっては聴力改善の期待あるいは目的が,手術イコール聴力改善と受取ってしまうことがある。分りにくい表現であるが,例をあげれば医師が手術の説明に聴力改善手術という言葉を用いれば,患者やその家族は手術をすれば必ず聴力が改善するものだと思ってしまうような場合である。聴力改善が手術の到達目標であるということが,聴力改善手術という複合語では十分現わしていない可能性がある。しかし,この言葉はその解釈が適当であれば極めて有用なものと思う。
聴力改善を目的とした手術には,たくさんのものがある。もちろんその全てが聴力改善だけを目的としたものではなく,聴力改善はその手術の到達目標のうちの一つであるものも多い。聴力改善が主とした目的であるものには,耳硬化症に対するアブミ骨手術や,外傷性耳小骨連鎖離断,中耳奇型などの手術があるし,聴力を少し広い意味で解釈すれば本年6月号トピックスで取上げた,人工中耳や人工内耳の手術もこの範疇に入る。
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