目でみる耳鼻咽喉科
術後性上皮真珠腫(graft cholesteatoma)
石井 哲夫
1
,
高山 幹子
1
1東京女子医科大学耳鼻咽喉科
pp.1050-1051
発行日 1990年11月20日
Published Date 1990/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900186
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鼓室形成術後,新生鼓膜の表面に小さな上皮性真珠腫が生じることがある。表層に限局しているので除去後も鼓膜穿孔に至ることはないが,術後治療上無視できない所見である。Lappen cholesteatomまたはgraft choles—teatomaと呼んだのはBeickertで,Glass—cockはepithelial pearl,鈴木は上皮内真珠腫と呼んでいる。私共は術後性上皮真珠腫とした1)。形成の誘因としては鼓膜皮膚断端の不整,まくれ込み,移植弁への着床不良,皮膚弁の裂隙などであろう。鼓膜上のものは術前穿孔縁に近い。外耳道皮膚の切開痕にも生じる。鼓膜上のものは鼓膜が薄い場合巨大になれば除去時に穿孔を生じることも考えられる。発生頻度,部位などは術者によって特徴がみられるかも知れない。私の場合,最も早い例は術後1ヵ月,遅い例で2年3ヵ月であった。鼓膜形成術のフォローは十分長期間にわたる必要がある。治療としては針で無麻酔下に表面を裂き,内容の上皮剥離弁の塊りを鈍針か吸引で除去する。小さくて針先で処理できないものは少し大きくなるのを待ってもよい。
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