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あとがき
大石 直樹
pp.694
発行日 2024年7月20日
Published Date 2024/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411203765
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日耳鼻のキャンペーン活動として,7月から難聴啓発キャンペーンが始まります。難聴は認知症と関連し,早期対策が重要だとの認識が社会的に徐々に高まってきていると思いますが,日本は先進国のなかで補聴器の普及率が極端に低いことがよく知られています。超高齢社会で加齢性難聴が増加していくのは間違いなく,今回のキャンペーンで高齢者の補聴器装用率が上がることが期待されていますが,それほど簡単にはいかない可能性があります。
騒音性難聴対策も同様にキャンペーンとして推進されていますが,騒音性難聴(音響外傷)は予防可能なのに対し,加齢性難聴の予防法は確立していません。ほぼ唯一の対策法である補聴器装用は,普及率の低さのみならず満足度の低さも大きな問題であり,その補聴器調整の問題を解決しなくては,加齢性難聴対策として全く不十分です。白内障,緑内障への治療法や予防法がある眼科領域の老年疾患とは,残念ながら大きな差があります。以前私たちが行った検討では,補聴器の装用効果に不満がある患者さんの補聴器は,補聴器認定技能士が調整しているにもかかわらず実に9割を超える補聴器が「不適合」状態であったことが判明しました。補聴器を専門的に調整できる言語聴覚士も圧倒的に数が少ないという厳しい現実もあります。今回のキャンペーンが,「補聴器の装用率が上がったが満足度がさらに下がった」という結果にならないよう,補聴器調整をしっかりと行える専門家を身近に見つけておくことが重要です。
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