Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
萌出障害とは歯牙が正常に萌出しないことを指し1),埋伏歯(未萌出歯)とは,歯牙が顎骨や歯肉に埋没して萌出していない歯牙のことである。萌出障害は第3大臼歯(智歯)に最も多く,次いで上顎犬歯で多くみられるとされており2,3),歯牙のすべてが萌出していない場合には完全埋伏歯,歯牙の一部が萌出していない場合には半埋伏歯という1)。完全埋伏歯では無症状であることが多く,治療を必要としないが,半埋伏歯では細菌感染による炎症が生じることがあり,例えば智歯が口腔内に一部萌出している場合には,智歯周囲炎を生じうる。一方,完全埋伏智歯であっても上顎洞内に一部突出している場合には,歯性上顎洞炎の原因となりうる。智歯が口腔内に一部萌出して智歯周囲炎を反復する場合には,経口的に智歯を抜歯することになるが,智歯が完全に埋伏しており上顎洞内に一部突出して上顎洞炎を反復する場合には,上顎洞経由の摘出術が必要になる。
経鼻内視鏡手術が一般的になる以前には,上顎洞内の操作は主に犬歯窩アプローチにより行われていた。しかし,経鼻内視鏡手術の普及と,鼻腔形態を保ちつつ上顎洞内での高い操作性を実現するendoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)4)や,スウィング法5)などの開発により,現在は,上顎洞内やその周辺の操作をより低侵襲かつ確実に行えるようになっている。
今回筆者は,上顎洞内に一部突出した完全埋伏智歯により歯性上顎洞炎を反復したと考えられる症例に対し,EMMMのアプローチを用いた智歯の摘出術を施行したので報告する。
We report a case of odontogenic maxillary sinusitis caused by a fully impacted wisdom tooth. He was advised by the dentist to undergo tooth extraction using the gingival approach, but he wanted to avoid possible sensory disturbance of the upper lip and maxillary teeth. The wisdom tooth to be extracted protruded into the maxillary sinus, causing maxillary sinusitis. An endoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)was performed, and the impacted wisdom tooth was removed without sensory disturbance. Maxillary sinusitis did not develop thereafter. EMMM may be applicable for the removal of impacted teeth that protrude into the maxillary sinus and cause maxillary sinusitis.
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.