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頭頸部画像診断に関する書物は,部位別に分け網羅的に記述されているものが多い。これらの書物は,診断のついている症例を辞書的に調べるには都合がいいが,画像診断を専門としない耳鼻咽喉科頭頸部外科医が,多忙な臨床の合間に読破し,偏りなく画像診断を学ぶのは容易なことではない。また,診断のついていない症例の初見画像をどのように読み解いて,診断や治療方針に結び付けるかを学ぶことにも困難を伴う。一方で本書は,経験を積んだ医師はもちろん,経験の浅い初学者であっても症例を疑似体験しながら,比較的容易に幅広く頭頸部疾患の画像診断を学べるように構成されている。
具体的には,まず年齢・性別および簡単な経過が示され,それとともにキーとなる画像が提示される。ここですぐに診断名を見るのではなく,経過と画像から何を疑うか自分なりに考えた後,画像所見の項目を読むことをお勧めしたい。頭頸部画像診断のエキスパートによる記述には,初学者からベテランまで,どのようなレベルの医師にとっても「なるほど」と思わせる読影のポイントやコツが簡潔に示されており,各症例においてより深く画像診断を学ぶことができる。画像所見の後には診断名が示されているが,引き続いて,その疾患についての臨床上のポイントや,解剖学的な周辺知識などの「問題」が提示される。クイズ形式でこれらの問いに答える訓練を行うことで,経験を積むのに何年もかかるような多岐にわたる疾患群を,あたかも実臨床で経験したかのように生きた知識として習得できる。その後には,疾患の概説および鑑別診断と,その鑑別のポイントが記載されている。収められている珠玉の136症例を本書で疑似体験すれば,耳鼻咽喉科頭頸部外科医として診断面において大きく飛躍が期待できるものと考える。
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