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耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域は広く,聴覚・平衡覚,嗅覚,味覚などの感覚器,気道と食物道,そしてこれらを包み込む頭頸部からなる。これら耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の障害は生命予後や生活の質(QOL)に大きく影響することが多い。また,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域は外界からの情報や空気,食物の入り口であり,異物などさまざまな外的物質に晒される領域ということもあり,救急疾患が多いのも特徴である。外来の救急疾患だけではなく,当直医としては術後急変の対応も求められる。本増刊号では救急・当直での心構えから準備,すべての耳鼻咽喉科・頭頸部外科医がマスターすべき基本手技,症状からみた鑑別診断,そして救急・当直で必要となる処置と治療,特に当直業務で問題となる術後急変への対応などの各論まで網羅して,各領域のエキスパートに執筆していただいた。
さて,労働者の働き方改革が大きな社会問題となっている。労働基準法は,近代市民社会の契約自由の原則を修正し,労働者を保護する労働法の一つとして昭和22年に制定された。しかし,本法施行後70年以上が経過した現在においても,多くの企業において労働基準法に対する違反行為が常習化されていることが指摘されてきたこともあり,平成30年7月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立,本年4月1日から大企業を対象に罰則付き時間外労働の上限規制が施行された。中小企業は来年度からのスタートになる。時間外労働の上限は,月45時間,年360時間が原則とされている。医師に関しては現在,厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」で最終調整がなされている。医師の救急・当直業務は高度のプロフェッショナルな業務で,その習熟のためには経験学習は不可欠であり,自己研修や生涯教育が必須な特殊性のある業務であるという観点からさまざまな検討がなされている。このようななか,救急・当直業務も大きく変化すると考えられ,手術内容などのバックグラウンドの情報がない状況で救急・当直処置をしなければならないことも多くなると予測される。本増刊号はそのような状況でも対応できるようにすべてを網羅したマニュアルであり,通読していただくことはもとより,救急・当直の現場に常備しておきたいマニュアルでもある。ぜひ,座右のマニュアルとしていただき,救急・当直の際に活用していただければ幸いである。
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